【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「……?」
「……?」

 見つめあって、二人で首を傾げる。

「こっちって? あの、あなたは……?」
「俺はヴォルフだが……」
「…………」
「…………」
「……え?」

 ひゅっと息が止まった。

「ヴォ……ル……フ? ……え? えぇぇぇぇぇぇ!?」
「うわ、びっくりした」
「ご、ごめんなさい。でも、本当にヴォルフ? 狼の? な、なんで? 人間になれたの?」

 そして、なんでそんなに、び、美形なの!?
 そりゃあ、ヴォルフはかっこいい狼だけど。
 逞しくて頼り甲斐があって、綺麗で優しくて、世界一の狼だけど!

「女神様のお力なの? なぜ今まで隠してたの? どうして」

 ああ、聞きたいことだらけでまとまらない。

「落ち着け。俺は逃げないから。ずっと一緒にいるって約束しただろ?」

 ひゃーっ。
 人間の男のひとの姿で言われると、もの凄く恥ずかしい。顔が熱くなる。

「それはっ、だって聖獣の、狼だったから」
「なんだよ、やっぱり狼のほうがいいのか……」

 途端に、しゅんとする美形さん――ヴォルフ。

 ああ、か、可愛い……。
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