【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
2.聖女に選ばれたのは……
どのくらいの時間が経っただろう。
しばらくわたしを癒してくれた白狼は、ふと耳を立て、わたしには聞こえない音を聞くと、慌てたように立ちあがって去っていった。
「……行っちゃった」
さあ、わたしもそろそろ神殿に向かわなきゃ。
選ばれるはずもない聖女選定の儀だけれど、この国の若い未婚の女性は必ず鑑定を受けなければならない。
数か月前に、先代の聖女様が亡くなったからだ。
聖女とは、愛の女神レクトマリアの加護を持つ乙女。
聖女は国に一人で、貴賤は関係なく、また同時に複数人は存在しない。
だから、聖女が亡くなると未婚の少女は神殿に集められ、『聖なる水晶』で次代の聖女の資格を持つかどうかの鑑定を受けなければならないのだ。
わたしは白く輝く石造りの神殿を見上げた。近くの町や村の小神殿を統括する、東方神殿だ。
わたしの住んでいる街は国でも有数の大きな都市で、国の東西南北に配された四方神殿の一つ、東方神殿がある。
わたしはここで儀式を受ける予定だが、小さな町の娘達は地元の小神殿に呼ばれる。