【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
わたしの腰をつかんで引き寄せ、長い脚の間に抱えこむヴォルフ。
「でも、なぜヴォルフは国王陛下がわたしに、その……甘い言葉をかけたって知っているの?」
ヴォルフは金色の瞳で、じっとわたしを見た。
「ずっと見てた。つらかったんだろ? 俺を呼べば、すぐにおまえをさらってやったのに」
妹の身代わりの聖女として国王陛下に口説かれ、神官達に敬われ、贅沢な暮らしをしていた大神殿の日々。
わたしはちっとも幸せじゃなかった。
「でも、マリアーナが逃げるのを望んでいなかったから我慢した」
「ヴォルフ……」
みんなの期待に、ぬぐえない罪悪感に、囚われていた自分。
とても苦しかったけれど……、人に流されてばかりだったわたしが自分で道を選んで歩き出せたのは、ヴォルフが待っていてくれたおかげだ。
「ありがとう。ヴォルフ、大好き」
「ああ……もう! 可愛いな! 女神の思惑なんかクソ食らえだ」
「女神様、くそ……!?」
あまりの悪態に愕然としたわたしを、ヴォルフがぎゅうぎゅうと抱きしめた。