【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
「御使いとか聖獣とか、人間の考えてることはよくわからない」

 ヴォルフはわたしを持ちあげてくるっと回し、湖のほうを向かせた。後ろから抱っこして、わたしのうなじに顔をうずめる。
 この体勢が好きみたい。

「そんなに間違ってはいないと思う。俺は女神レクトマリアの眷属神だ。女神に創られ、女神の意志を汲むもの」

 その声は淡々としている。
 眷属神……、ヴォルフはやっぱり女神様の使者だったんだ。
 背中を覆うヴォルフの体温が急に遠く感じられて、胸が締めつけられた。

「だが、あいつは悪趣味なんだ」
「女神様が悪趣味……?」
「愛と豊穣の女神なんて言われているが、本当は愛と性を司る女神なんだぜ?」

 思わず振り返って、ヴォルフを見る。

「愛と、せ、性!?」
「そう、性。夜の営み、閨の秘め事。率直に言えば、交尾だ」
「こ……交尾の女神様」
「色事で世界を満たすことが生き甲斐っていう、変わった女神だ。恋愛話が大好きで」

 ふうっと深いため息を吐くヴォルフ。

「初めてマリアーナと逢った時、俺が浮かれていたんで、目を付けられた」
「浮かれて……?」
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