【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 半開きの口に舌を突っこみたくなる。心のままに貪って鳴かせたくなるが……。
 マリアーナの気持ちが自然と熟するまでは待つつもりだ。マリアーナを怖がらせるようなことは絶対にしない。
 絶対に……、できるだけ……たぶん。

「おまえは咲きはじめたばかりの花みたいだ。初々しくていい匂いがして、みんな蜜を求めてやってくる」
「ヴォルフ……」
「だけど、誰にも渡さない。マリアーナは美しくて優しい、俺の自慢の……連れだ」

 恋人とか嫁ってのは、さすがに気が早いよな。
 とりあえず今は連れと言っておくが、いつか必ず唯一の番にするからな。





 * * * * *





 その夜は町の宿に泊まった。
 マリアーナもたまには人の町を満喫したいだろうという思いもあったし、マリアーナへ欲に満ちた視線を向ける男どもを牽制する狙いもある。

 ふん。
 こいつは俺のもんだぜ!

 指をくわえて見ている男どもを前にマリアーナを部屋に連れこむのは、なかなかいい気分だ。

「……はあ……」

 だが、しかし。
 隣の寝台でぐっすり寝ているマリアーナを、指をくわえて見ているのは、俺も同じだった……。
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