【書籍化＆コミカライズ】身代わり聖女の初夜権～国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています～

「俺は、おまえに知らせるべきなのか……？」

　――今や。
　マリアーナこそが真実の聖女なのだと……。

　マリアーナが生まれた時から聖女と定められていたのかどうかはわからない。
　もしかしたらこれは女神レクトマリアの悪戯なのかもしれない。俺の想いを知った女神が、面白がって手を回した可能性もある。
　どちらにしてもマリアーナが俺の神力を濃くまとっている限り、マリアーナ以上に聖女にふさわしい女性は現れないだろう。

　……俺の執着が、次代の聖女を決めてしまった。

「進んで教えたくは、ないな」

　俺は森の中で、マリアーナと二人楽しく暮らせればそれでいい。
　だが、人間の欲望は本物の聖女を放っておかないはずだ。
　また、マリアーナ自身が『聖女の力』をどうとらえるのかも予想ができない。

　深いため息が出た。
　俺はマリアーナの美しい黒い髪をひと房手に取って、そっと口づけた。