【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
第三章 本物の聖女を探せ!
1.少女ともふもふの逃避行
町を出てから、妙な視線を感じるようになった。
厚手の衣類を購入し、おいしい串焼きを食べた、あの町だ。
最初に気づいたのは、もちろんヴォルフだった。わたしの手を握りまっすぐ前を向いて歩きながら、小声で話しかける。
「マリアーナ、そのまま前を見ていろ」
「……なぁに、ヴォルフ?」
「あとを付いてくるものがいる。森へ入って撒くぞ」
町を囲む城壁を出るとのどかな畑や牧場が続き、さらに小一時間歩くと木々が増え、森が見えてくる。
木々に囲まれ視界が遮られたところで街道を外れ、森の中へと入っていく。
「しっかりつかまっていろよ」
ヴォルフは人間の格好のままわたしと荷物を背負い、ある程度奥まで進むと、狼に変化し疾走した。
わたしはただ必死でヴォルフにしがみついていた。
けもの道もないような深い森を抜けると、渓谷に出た。
険しい山間を縫うように川が流れている。
ヴォルフが川面に顔を出している岩を飛び移りながら上流に向かうと、轟音が聞こえてきた。
「滝だわ……!」