【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
2.牙の下に飛びこむ
「だから、神力を強めるな」
『失礼、つい興奮してしまって。あなたがマリアーナちゃんね、はじめまして。わたくし、ずっと逢いたかったのよ。銀の狩人の想いびとに。ぷぷっ』
ぷぷ?
今、ぷぷって笑った?
女神レクトマリアが……?
『だって、おかしくて。氷の如く冷徹で炎の如くかれ――』
「繰り返すな」
ヴォルフが苦いものを吐き出すように、女神様の言葉を断ちきる。
「用件を言え」
『はいはい。ねぇ、あなた、マリアーナちゃんをどうするつもり?』
マリアーナちゃんって……わたしのこと?
女神様が気軽な口調のまま続ける。
「どうするとは」
『このままマリアーナちゃんをさらって世界の果てにでも行くの? 人としての命が尽きるまで、自分の腕の中で自分だけを見させておけば、それで満足なのかしら』
「…………」
ヴォルフは無言で女神様を睨みつけた。
わたしの背中に腕を回して、わたしを隠そうとするかのようだ。
「マリアーナは聖女じゃない」
『わかっているくせに』
「まだ、人間はわかっていない」