今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
「鈴さん、彼は時雨君。果歩の、・・・亡くなった妻の弟さんでね。今でもときどき遊びに来てくれるんだよ」
叶は彼に「僕の大切なひと」だとあたしを紹介した。
「いいんじゃねぇの。・・・アンタが決めたんなら」
時雨はあたしを一瞥して叶にそう言った。
果歩さん。前の奥さんが8年前に事故で亡くなったのは聴いていた。七回忌の時、あちらのご両親が叶に言ってくれたのだそうだ。指輪を外して次のひとを見つけなさいと。
叶の左薬指には確かに何も嵌まっていない。でも何となく思う。彼はたぶん二度とその指には嵌めないんだろう。何となく。果歩さんへの感謝・・・というか。叶にとって妻と呼べるのは今でも彼女ひとりだけなんじゃないかと思えるから。
あたしは。叶の傍にいられればいい今は。可愛がってもらうばっかりで、全然そんな立ち位置にはないって自分が一番よく知ってるし。
「そんな年下好きだったとは知らなかったけどな」
時雨が肩を竦めて見せたのを、あたしはちょっと訝しく反応。三十六歳と二十六歳って、そんなに言われるほど?
すると叶が小さく笑った。
「鈴さんは可愛く見えるけど僕と十しか離れてないからね」
「・・・マジ?」
「僕も最初は女子大生かと思った」
はいはい。すみせんね童顔で。子供の頃から背も小さかったし、これは母譲り。前の会社でも、取引先の新人営業マンとか勝手に年下扱いしてくれたっけ。
「鈴さん、時雨君はスポーツマンなんですよ。格闘技のジムに通ったりね。力仕事があったら遠慮なく頼んだらいい」
「ああ、それじゃ書棚の移動とか楽ですね」
「ほんとに遠慮ねーな」
ぼそりと呟く姿に思わずあたしも笑いが零れた。
叶は彼に「僕の大切なひと」だとあたしを紹介した。
「いいんじゃねぇの。・・・アンタが決めたんなら」
時雨はあたしを一瞥して叶にそう言った。
果歩さん。前の奥さんが8年前に事故で亡くなったのは聴いていた。七回忌の時、あちらのご両親が叶に言ってくれたのだそうだ。指輪を外して次のひとを見つけなさいと。
叶の左薬指には確かに何も嵌まっていない。でも何となく思う。彼はたぶん二度とその指には嵌めないんだろう。何となく。果歩さんへの感謝・・・というか。叶にとって妻と呼べるのは今でも彼女ひとりだけなんじゃないかと思えるから。
あたしは。叶の傍にいられればいい今は。可愛がってもらうばっかりで、全然そんな立ち位置にはないって自分が一番よく知ってるし。
「そんな年下好きだったとは知らなかったけどな」
時雨が肩を竦めて見せたのを、あたしはちょっと訝しく反応。三十六歳と二十六歳って、そんなに言われるほど?
すると叶が小さく笑った。
「鈴さんは可愛く見えるけど僕と十しか離れてないからね」
「・・・マジ?」
「僕も最初は女子大生かと思った」
はいはい。すみせんね童顔で。子供の頃から背も小さかったし、これは母譲り。前の会社でも、取引先の新人営業マンとか勝手に年下扱いしてくれたっけ。
「鈴さん、時雨君はスポーツマンなんですよ。格闘技のジムに通ったりね。力仕事があったら遠慮なく頼んだらいい」
「ああ、それじゃ書棚の移動とか楽ですね」
「ほんとに遠慮ねーな」
ぼそりと呟く姿に思わずあたしも笑いが零れた。