今宵も甘く咲く　～愛蜜の贄人形～
ディナーは最上階のフレンチレストランで。着てきた服だと気後れしそうだったから、買ってもらったワンピースに袖を通してしまう。

･･･ううん、叶のことだからきっとこれも計算内。本当にこのひとって。向かいの席でシャンパングラスを手にする彼を視線に捉えながら。
　
テーブルマナーなんて聞きかじり程度だし正直苦手。悪戦苦闘とまでは行かなくてもデザートまでどうにかいただき、部屋に戻ると叶がバスルームにあたしを誘った。

「綺麗に洗ってあげるよ、･･･全部」
　　
泡まみれのバスタブの中では思ったほど啼かされず。髪を乾かすのにバスタオルを躰に巻き付けただけのあたしを、背中から抱き竦め叶は露わになっている肩に唇を這わす。

「･･･こら」

まだ途中だから、と宥めれば。

「僕が乾かしてあげる」
　
言ってあたしの手からドライヤーを取り上げてしまう。指で梳くように風を通す鏡の中の叶が満足そうなのがちょっと可愛い。

それから抱き上げられてベッドに連れて来られると、ほんの少し･･･叶の纏う空気が妖しさを増した。気がした。
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