今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
「スズ・・・」
 
耳許で叶の声がする。手も目も、戒めはそのままで。

途中から良く判らなくなっていた。同時に違う場所を嬲られて。叶のじゃない指があたしに触れ、あたしを責め立てていた。

「歯を立てないで。そう・・・上手だね」

叶の声が上でするのに、あたしを押さえ込む別の力に翻弄されてた。・・・もうひとり、誰かいた。
 
現実に醒めた途端。粟立つ。強張る。戦慄(わなな)く。

「怯えてるね・・・」

凍り付いて固まったあたしの頬に指が触れた。同時に熱が離れていった、叶じゃないダレカの。

目隠しだけ解かれ、恐る恐る瞼を開いていく。ベッドの中央に横たわったあたしの左側に叶、反対側にいたのは。

時雨。

ただただ言葉にならない衝撃に打ちのめされて、自分が震えていることすら分からなかった。
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