今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
お正月気分も薄れ、日常が帰ってきた頃。あの夜以来はじめて、時雨と顔を合わせる羽目に陥っていた。
叶に仕組まれたのを後で二人で気付いたのだけど。買い付けに出掛けると言い置いて店を出た直後に、時雨は突然やって来た。最初の出逢いを再現したかのように店のドアが開き、お客かと思ったあたしと入って来た時雨は、互いを見合ってしばらく固まっていた。
「えーと・・・、叶は出掛けてて・・・」
ぎこちなくそう言うと、小さく溜息を漏らし。
「待たせてもらうわ」
科白までこの間と一緒。
円卓席にどっかり腰を下ろした彼に紅茶を出し、書棚の整理に逃げようと踵を返しかけたところを呼び止められた。
「叶から聞いたか?」
なにを?首を横に振る。
「何も?」
今度は縦に。
「・・・ったく。俺に丸投げかよ」
チッと舌打ちが聴こえた。
叶の話し方が丁寧な分、粗野というか粗忽というか。前にいた会社の男性社員と比べてもそんなに大差ないとは思っても、気に障るというか。
相手にしたくなくて行こうとしたあたしの、今度は腕を掴まえた。
「・・・知りたいことあんだろ?教えるから座れよ」
叶に仕組まれたのを後で二人で気付いたのだけど。買い付けに出掛けると言い置いて店を出た直後に、時雨は突然やって来た。最初の出逢いを再現したかのように店のドアが開き、お客かと思ったあたしと入って来た時雨は、互いを見合ってしばらく固まっていた。
「えーと・・・、叶は出掛けてて・・・」
ぎこちなくそう言うと、小さく溜息を漏らし。
「待たせてもらうわ」
科白までこの間と一緒。
円卓席にどっかり腰を下ろした彼に紅茶を出し、書棚の整理に逃げようと踵を返しかけたところを呼び止められた。
「叶から聞いたか?」
なにを?首を横に振る。
「何も?」
今度は縦に。
「・・・ったく。俺に丸投げかよ」
チッと舌打ちが聴こえた。
叶の話し方が丁寧な分、粗野というか粗忽というか。前にいた会社の男性社員と比べてもそんなに大差ないとは思っても、気に障るというか。
相手にしたくなくて行こうとしたあたしの、今度は腕を掴まえた。
「・・・知りたいことあんだろ?教えるから座れよ」