今宵も甘く咲く ~愛蜜の贄人形~
フロントガラスから視点を逸らさない横顔に、『参った』とでも言いたげな笑みが滲んだ。

「顔を見ちゃうと、すぐにでもここで君を滅茶苦茶に啼かせそうだから。手を繋ぐのも我慢してるんだよ、・・・(たが)が外れないように」

どこか切なそうな。殺すような、淡い笑み。

「今の僕はただの(けだもの)かもしれないね。可哀相だけど、もうどこにも逃げられないよスズ」

可哀相。
逃げられない。

優しい叶は自分をまた悪者にする。

「だから僕の奥さんになるしかないんだよ、・・・君は」




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