気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
第二十五章 まだまだ終わらない高校
終業式
アンナとの、初めてのプールデートは無事に終了した。
とても楽しかったです……なぜならば、可愛いアンナちゃんのビキニ姿を3000枚ほど、保存できましたので。
毎晩、自室で1人、パソコンで写真を各フォルダに分別する。
『使えそう』
『可愛い』
『ブレてるが消したくない』
そんな風に名前をつけて、しっかり番号を振り分けていく。
ああ、この作業たまらなく楽しいぜ。
早く次のプール取材、来ないかな。
連日、徹夜でそんなことを繰り返していると、すぐに一週間が経った。
※
スマホのベルで目が覚めた。
着信名を見ると、ミハイル。
「ふぁ……もしもし」
『タクト? おはよ☆』
「ああ、おはよう。今何時だ?」
『え、朝の4時半☆』
朝じゃねーだろ。夜明けだ。
「んで、何の用だ?」
『今日さ、終業式じゃん』
「そうだったな。明日から夏休みってわけだ」
やっとバカな高校から解放される至福の時。
『それでさ。タクトはちゃんと今日の準備した?』
「準備? 登校に必要な物ならちゃんとリュックサックに入れてあるぞ」
『さすが、タクトだな☆ じゃあ、あとでいつもの電車でな☆』
「おおう……」
準備ってなんだ?
しかも、ミハイルのやつ。なんだかテンションが高い声だった。
夏休みになるから、毎日遊べるってことで嬉しいのか?
ま、家を出るまでしばらく、また仮眠を取ろう。
※
朝食をとったあと、いつもどおり、小倉行きの電車に乗る。
二駅過ぎて、席内駅に止まる。
ホームの上で、一人の小さな少年が手を振っていた。
古賀 ミハイルだ。
迷彩柄のタンクトップに、薄色のデニムショートパンツ。
そして、なぜか背には大き目のリュックサックを背負っていた。
珍しい。
「おはよ☆ タクト!」
当然のように、俺の隣りに座る。
細くて白い脚をピッタリとくっけて。
思わず、ドキッとしてしまう。
「お、おはよう」
「今日の学校。楽しみだよな☆」
「え? なにがだ? ただの終業式だろ」
「宗像センセが言ってたゾ。一ツ橋高校だけだって。あんな特別な終業式はって」
「はぁ……」
なんのこっちゃ。
あれか、ヤンキーばっかりが通っている高校だから、殴り合いでもするんだろうか?
いやいや、さすがにそれはないよな。
ガチンコでも、俺はファイトできないひ弱な一般学生。
おてんてんで戦うってなら、まあ話は別だが……。
妙に上機嫌なミハイルが気にはなるが、登校に前向きなことは良い心がけというものだ。
鼻歌交じりの彼と共に、赤井駅で降りて、一ツ橋高校へ向かった。
校舎に着くと、なにやら騒がしい。
駐車場に大きなバスが一台、止まっている。
そこに生徒たちがたくさん集まっていた。
皆が皆、大きなカバンやトランクなどを抱えて。
「ん? どういうことだ……今日は終業式だろ?」
「そうだよ。だから、バスに乗って行くんじゃん」
ミハイルが目を丸くして言う。
俺が首を傾げていると、そこへ宗像先生が現れた。
「よぉ! 新宮に古賀も来たのか! えらいえらいっ!」
今日も酒くさい。
アル中が移るから、どっかにいってください。
しかし、今日の宗像先生は、装いがいつもと違う。
いや、確かに淫乱教師であることは知っているのだが、なんか違和感を感じる。
スカートはいつものように、超ミニ丈のタイトスカートに黒のストッキングとピンヒール。
問題は上半身だ。
頭に小さな帽子を被り、ふくよかな胸はジャケットで隠してある。
おかしい。
この破廉恥バカは、だいたい露出を好む。
ならば、汚いデカチチは放り出しているはずなのに……。
俺が怪訝そうに、先生を見つめていると、口を大きく開いて、下品な声で笑い出す。
「だぁはははっははは!」
相変わらず、うるせぇ!
そして、のどちんこが丸見えだ。
中身、ほんとただのおっさんだろ。
「どーした、新宮? そんなに今日の私のファッションが気になるのかぁ~」
嫌らしくニヤニヤ笑いやがる。
「違いますよ……」
「じゃあ、どうしてだ? この私で使いたいのか? 写真を撮ってもいいぞ」
誰が撮るか!
それを鵜呑みにしてか、隣りにいたミハイルがブチギレる。
「タクトっ!? 宗像センセの写真なんか撮って、何に使うんだよ!?」
「いや、撮らないし、使うこともないから……」
アンナモードで、たくさん撮らせておいてよく言うぜ。
いつも、お世話になってます。
ムキーッと猿のように、怒るミハイルを一旦放置して、話題を変える。
「宗像先生、一体どういうことですか? 先生、いつもの服装じゃないし、あのバスはなんですか?」
そう問うと、宗像先生はキョトンとした顔で返事をする。
「え、新宮……まさか、手紙読んでないのか?」
「手紙? なんのことです?」
すると、宗像先生はその場で「あちゃ~」と頭を抱えた。
それを聞いてミハイルも驚く。
「タクト! じゃあ、ちゃんと準備してないの!?」
「は? 準備って終業式のだろ」
あれ、俺がなにか間違ってる?
「だから、オレが朝、ちゃんと電話で聞いたのに!」
なぜか悔しそうに歯を食いしばるミハイル。
「どういうことだ……俺には全然わからんのだが」
状況が把握できず、混乱していると、ミハイルが半泣き状態で叫んだ。
「今日は終業式だから、バスでみんなで別府温泉に行くのっ!?」
「ハァッ!?」
ちょっと、言ってる意味がわからない。
何故、終業式なのに、旅行するんだ?
「よくわからないのだが……それって泊まりなのか?」
「そうだよ!」
めっちゃキレてるよ、ミハイルママ。
泣いてるし……。
俺たちが言い合いをしていると、宗像先生が間に入る。
「悪い悪い。どうやら、新宮のことだけ、手紙を出し忘れてたみたいだ、てへぺろ♪」
舌を出して、笑ってごまかす。
お前の凡ミスじゃねーか。
ブチ殺すぞ、コノヤロー!
「え~ じゃあセンセ……タクトは着替えとかどうするんすか?」
「まあ……あれだ。私の下着でも使えばいいじゃないか。Tバックだから、お尻が楽だぞ~」
「そっか。なら、大丈夫っすね☆」
全然、良くない。
女もんのパンティーで、しかもTバックとか。
「しかし、宗像先生。なぜ、終業式だというのに旅行するんですか?」
「ああ……それはだな。本校特有の事情があってな。うちの高校は通信制だし単位制だろ。だから、今期で卒業する生徒もいるんだ。ごく僅かだがな。だから、卒業旅行も兼ねて、終業式は毎回、旅行をするようにしているんだ」
なにその終業式。
「じゃあ会場はどこでやるんですか?」
「昔はちゃんと、会館借りてやってたけど、もうめんどくせーだろ? だから、バスの中で今期は終業ってことにした。司会役の私はバスガイドさんも兼ねてる♪」
めっちゃ笑顔で酷いこと言っているんすけど。
「はぁ……じゃあ、今からバスに乗って、別府まで行くんすね……」
俺だけ知らされていない孤独さよ。
「とりあえず、早くバスに乗れ! 三ツ橋高校の校長に見つかったらヤバいからな」
「え、どういう意味です……」
なんか嫌な予感。
「野暮なこと聞くなよ。このバスは、全日制コースの部活で使うやつだ。遠征とかでな」
「それを無断で拝借したってことですか」
「新宮、パクったみたいな言い方するなよ。バレなきゃいいんだよ。こういうのは」
ふと、運転席に目をやると、ガタガタ震えた一ツ橋高校の男性教師が見えた。
確か現代社会の先生だ。
なぜ彼が、ハンドルを握っているんだ?
「宗像先生。運転席に現代社会の先生がいるんですけど……」
「あいつか、あのバカは知ってると思うが、本校の卒業生でな。私が雇ってやったからさ。こういう時使えるんだな、ハハハッ!」
そう言えば、バーベキュー大会の時も良いように使われていたな。
かわいそうに……。