気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
第三十三章 こいつ、カワイイか!?(ブチギレ)

童貞君のお宅にアイドルが訪問


 お盆休みに入り、地元の真島商店街はすっかり静まりかえっていた。
 普段なら営業している店もシャッターが下ろされている。
 きっと、みんな帰省したり、どこか遠くに旅行でも行っているのだろう。

 俺は生まれてから、ここ福岡県から出たことないし、夏休みなんて特になにもやることがない。行くところもない。
 中洲のばーちゃんはめんどくさいから、会いたくない。
 親父は無職だから家族サービスなんて皆無だ。
 今年もどこかでヒーロー業ってやつに励んでいるのだろう。

 さすがにミハイルもお盆は家族と過ごすらしい。
 なんか、俺と遊んでばかりいたから、姉のヴィクトリアが寂しいと不機嫌なのだとか。
 まあ、たまには一人の時間ってやつも悪くない。

 この前、パンパンマンミュージアムで大量にゲットできたアンナちゃん動画と写真を編集するので、右手が大忙し。
 学習デスクの上に置いてあるノートパソコンを使用しているのだが、かなり熱を持っている。
 外付けのハードディスクを繋いでいるが、処理が追いついてこない。

「うーん。高画質で保存しているから、重たいな……」

 これを機にハイスペックのデスクトップパソコンでも購入するかな。
 
 自室で一人、延々と編集作業をしている。
 妹のかなでは、母さんに言われて、リビングで監視付きの受験勉強中。
 この部屋にいると、勉強そっちのけで、すぐに男の娘のエロゲーをやるから、と注意されたからだ。
 おかげで、俺はアンナのパンチラ写真を堂々と楽しめる。
 最高だ。

「ふぅ……」
 モニターに映し出された純白のレースを拡大してみる。
 その美しい光景に見惚れていると。
「タクくん。ちょっといいかしら?」
 ノックもなしに母さんがドアを開けてきた。
「ちょ、ちょっと! 母さん! 部屋に入る時はノックしてくれよ!」
 咄嗟にノートパソコンを折りたたむ。
「あらあら。ひょっとして自家発電でもしてたの?」
「し、してないし!」
 近いことはしてたけど。
「あのね、タクくんにお客さんが来ているのよ」
「え? 俺に?」
「今裏口に来ているわよ。なんか可愛らしい女の子だったわ」
「女?」

 可愛らしい女の子が俺の自宅に来るなんて、エロゲーみたいなイベントあるわけないだろと思ったが……。
 最近はアンナやひなたとよく遊んでいたからな。
 頭に浮かぶとしたら、あの二人ぐらいだろう。

 自室を出て階段を降りる。
 一階の母さんの美容院はシャッターを下ろしているから、真っ暗だ。
 お盆休みでお客さんは誰もいない。
 裏口から外に出ると、一人の少女が立っていた。

 ゴスロリファッションの痛々しい女子。
 艶がかった長い黒髪。そして、眉毛の上で綺麗に揃えたぱっつん前髪。
 日本人形みたい。
 黙っていれば、美人の部類なのだろうが……。
「ちょっと! ガチオタ! なんで連絡してこないのよ!」
 開口一番がこれだもの。
 自称アイドルの長浜 あすか。
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