気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

痴漢は最低です。ちゃんと告白しましょう。


 宗像先生が言った通り、各授業のレベルは前期より、遥かに劣る内容になっていた。
 どこまで、バカになるんだってぐらいの小学生並み。
 アニメ見たり、映画を見て感想文書いたりと……。
 逆に疲れる授業だ。
 でも、アホなヤンキーのミハイルには、ちょうど良い授業だったようだ。
 終始リラックスしていた。


 昼休みに入り、俺は一人トイレへ向かう。
 校舎もだいぶ冷えてきた。
 もう、今年もあと2カ月だもんな……。
 なんて、廊下を歩きながら、窓の景色を眺める。主に山とか、山しかないんだが。

 一ツ橋高校はちょうどY字型に設計された校舎だ。
 俺たちが普段利用している教室棟は、南側。
 そこから、真っすぐ歩いて付き合った所に、螺旋階段がある。
 北西側の特別棟、北東の部室棟。
 それらが交差して、1つになった中央部分にトイレが存在している。

 日曜日だから、全日制コースの生徒たちは、あまりいないが。
 部活のために通学している生徒がいる。
 あっちの奴らは、真面目に制服を着ているから、出くわした時、お互いに気まずい。

 リア充な生徒が俺の私服を見た瞬間、「プッ。ダッセ」なんて吹き出すことも、しばしば。
 その度に、俺は舌打ちしてやるが。


 だが、今日は誰もいないようで、安心してお花畑に行けそうだ……。
 と、思っていたら、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

「きゃあああ!」

 廊下に響き渡る甲高い女の叫び声。
 一瞬、ビクッと身体を震わせたが、すぐに現場へと向かう。
 女子トイレの前で、一人の女子高生が黒づくめの男に背後から、羽交い締めにあっていた。
 襲われていた女の子は、見覚えがあった。
 ボーイッシュなショートカットで、校則違反スレスレのミニ丈スカート。
 現役女子高生の赤坂 ひなただ。

「いやあああ!」

 黒づくめの男は、あからさまに怪しかった。
 全身、真っ黒のスエット。顔は大きなマスクとサングラスで覆っており、頭にはベレー帽。
 不審者ですって言っているようなもんだ。


「黙りなさい、すぐに終わるから……」

 そう言ってブレザーの上からとは言え、ひなたの胸をまさぐる男。
 彼女の控えめな乳房を遠慮なく、両手で揉みまくる……。

「いやあああ! やめてぇ!」
「なるほど……これは近い」
 
 躊躇なく女子高生の胸を揉むから、思わず見惚れて……いや傍観してしまった。
 俺に気がついたひなたが、助けを呼ぶ。

「あ、新宮センパイ! 助けてください!」
「おお……よし、待ってろ」

 急いで、ひなたの元へと駆け寄る。
 小柄な男だったから、すぐに彼女から引っぺがせると思ったが、ビクともしない。

「お前! ひなたから離れろ!」

 後ろから男の両肩を掴んで、離そうとするが、逆に「邪魔っ」と突き飛ばされてしまう。
 驚いたことに相当な馬鹿力だ。

 片手でポンと押されただけのなのに、廊下をゴロゴロと転がり、壁で頭を打つ。
 トラックに轢かれたかってぐらいの強い衝撃だ。
「いっつ……」
 強く頭を打ったため、視界がグラグラと揺れる。
 
 なんか、以前もこんな事があったような……。
 いつだっけ?

 瞼をこすって、目を凝らす。
 すると、目の前には自身の両脚が2つ。
 どうやら、でんぐり返しの状態になっているようだ。
 
「クソ……」

 ゆっくりと起き上がる。
 だが、未だにフラフラとして、ちゃんと立つことができない。

 ひなたはどうなった?
 彼女の身が心配で、重たい脚をゆっくりと動かす。


「や、やめろぉぉぉ!」

 ん? ひなたの声じゃない。
 確かに甲高い声だが、これは……そう俺の推しに近い。
 アイドル声優の『YUIKA』ちゃんのような天使、あま~い声。
 録音して、寝る前に何回も聞きたくなる癒しボイス。


「イヤだっ! お、お前。なに、考えてんだよ!」

 気がつけば、女子トイレの前で、もみくちゃになっている男が二人。
 ミハイルと先ほどの黒づくめ野郎だ。

 ひなたは、その近くで尻もちをついて、上で激しく絡み合う野郎共を眺めていた。

 黒づくめの男は、背後からミハイルの胸を両手で揉む……というか、まさぐる。
 無いからね、あの子は。
 男だし、絶壁だから。

「硬い……とても近い」

 ミハイルの小さな胸を触って、一人頷く男。

「や、イヤッだって! なんで触るんだよ……あんっ!」

 男の触り方はとても、いやらしかった。
 ピアノを奏でるように、一本一本の指で、ミハイルの胸を撫で回す。
 嫌がる彼を力でねじ伏せ、己が性欲を満たすのだ。

 だが、見ていて不思議だ。
 あの伝説のヤンキー。
 ミハイルが抵抗しているというのに、男からは逃げられない。
 彼の馬鹿力ならば、それこそ、ワンパンだろうに。

 俺が首を傾げていると、ミハイルの声色が変わっていく。

「い、イヤッ……んんっ! あ、あぁん! そ、そこはダメェ!」

 顔を紅潮させ、エメラルドグリーンの瞳から涙がこぼれる。
 きっと、ピンク色のトップを触られたのだろう……。

 こ、これは……なんて、エッチな光景なんだ!?
 俺はマブダチである彼が、変態に汚されていく姿に興奮を覚えていた。
 ちょっと、トイレ行ってきていいですか?


「やはり……あなたね。例のヒロインは」

 ん? 男だと思っていたが、あいつの喋り方……。
 ひょっとして、女か!?

「いい加減に……しろっ!」

 ミハイルが右手で背後の不審者を振り払う。
 しかし、相手はひょいっと軽く避けて、数歩後ろに下がった。

 全身を良いように触られたミハイルは、顔を真っ赤にさせて、怒りを露わにする。

「お前っ! なんなんだよ! オレは男だっ!」
 それを聞いた不審者は言葉を失う。
「え……ウソでしょ?」

 興奮しきったミハイルは不審者目掛けて、突っ走る。
 一瞬で間を詰め、ベレー帽とサングラスを奪い取った。

 すると、そこに現れたのは、2つのブルーサファイア。
 ミハイルに帽子を外されたことによって、長い髪が肩に降りかかる。
 キラキラと輝く、金色の美しい髪。

「あなた……タクトの新しい女。ブリブリ女じゃないの?」

 不審者は、僕の元婚約者。マリアでした……。
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