気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
属性診断
知らない間に俺とミハイルが、汚されちゃったよ……。
まあ、あくまでも創作物だから、大目に見てやるか。
こちらに直接、危害があるわけでもないし。
しかし、改めて表紙や絵のタッチを見ていると、どこか見覚えがある。
ネームこそ、ほのかが描いたらしいが、この漫画家さんはかなり上手い。
BLに詳しくないけど、何故か記憶にある……うーむ、どこかで見かけたのかな。
ほのかに尋ねてみた。
「なあ、この作画を担当した人って、有名な漫画家さんか? どこかで見たことあるんだが……」
俺がそう言うと、鼻息を荒くし、熱く語り始める。
「さすが琢人くん! よく気がついたわね。この作家さんは、まだ無名の新人だったけど、とあるインフルエンサーのおかげで、バズったのよ! それでBL編集部からスカウトされたの!」
「い、インフルエンサー? 誰だ?」
「BL界の四天王が一人。ケツ穴 裂子さんよ! あの御方のお目に叶うと書籍化、重版間違いなしなの!」
「……」
それ、俺の母さんだよ。とは言えなかった。
話を更に詳しく聞くと、作画を担当したのは、以前コミケで母さんが爆買いしたサークル“ヤりたいならヤれば”の同人作家さんだったらしい。
確かに腐女子の界隈では、ケツ穴 裂子という読み専は有名人のようだ。
そして、母さんがその作品を拡散すれば、商業デビューできたり、アホみたいに売れるらしい。
「琢人くん。実は私もツボッターでケツ穴さんに拡散してもらったのよ! 『変態女先生は才能ある』って。だから、めっちゃ売れたのよ! 処女作なのに!」
「えぇ……ちなみに、どれぐらい?」
「100万部!」
「……」
俺も母さんに拡散してもらった方がいいのかな?
でも、BLなんかと、一緒にされたくない。
※
ほのかの告白は、しかと受けとめた……つもり。
だが、どうしても許せない部分が1つだけある。
それは俺が作中、受けにされているところだ。
「なぁ……ほのか。なんで、俺を受けにしたんだ?」
そう問いかけると、彼女は真顔で即答する。
「え? だって、琢人くんって、絶対受け属性だもん」
「ハァ!?」
「気がついてなかったの? 琢人くんってさ。なんか色んな人や物事に文句とか、喧嘩腰に見えるけど……。基本は優しいし、押しに弱いでしょ。だから、私の中では受けかな♪」
「ウソだろ……?」
「ホント、ホント♪ ノン気ぶっても、界隈に入り込んだら、ズル剝け間違いなしの逸材だと思うよ♪」
「……」
俺ってそんな風に見られていたの?
嫌だ、絶対に嫌だっ!
認めたくない……もし、ミハイルとそういう関係になったとしても、絶対に俺は攻めだ!
ひとりで頭を抱えていると、ほのかが優しく肩を叩いてきた。
「そんなに難しく悩んじゃダメだよ、琢人くん」
ニッコリと笑って見せる、ほのか。
誰のせいで、こんなに悩んでいると思っているんだ。
「俺は……受け身じゃないぞ、ほのか。それだけは認めたくない」
「まあまあ、今すぐハッキリしなくても良いんじゃない? “リバーシブル”って可能性もあるし♪」
その言い方だと、もう俺がそっち界隈に向かうの決定じゃないか。
「クソ。俺、ノン気なのに……なんでそんな風に見られるんだ……」
「琢人くんも往生際が悪いなぁ。じゃあ、試してみる? 攻めか、受けか」
「え?」
「簡単なテストで、琢人くんがどっちかすぐに分かるよ♪」
藁にも縋る思いで、ほのかの手を掴む。
「頼む! 俺は全否定したいんだ、やってくれ!」
「オッケー♪」
※
ということで、急遽、ほのかによるテストが始まった。
彼女の説明によると、今から1つの指示を出すと言う。
俺がそれに従えば、すぐに判明するらしい。
「琢人くん、ちょっと私に背中を向けてくれる?」
「え? こうか?」
黙って、彼女に背を向けた瞬間だった。
肛門に衝撃が走る。
ジーパン越しとはいえ、なにか太くて硬いものを突っ込まれたようだ。
「痛ってぇ!」
振り返ってみると、にんまりと微笑むほのかが、俺の尻にマジックペンの先っちょを、突っ込んでいた。
上目遣いで、怪しく微笑む。
眼鏡をキランと輝かせて。
「ほらぁ。やっぱ、受けじゃ~ん」
「なっ!?」
ほのかは尻からマジックをひっこ抜くと、今行ったテストの結果と説明を始める。
「いい、琢人くん。このテストは、その人が受動か能動かを確かめるものよ」
なんて人差し指を立てて、嬉しそうに語る。
人のケツに、躊躇なくブッ刺しやがって……。
尻をさすりながら、俺は反論する。
「なんで、そうなるんだ? ほのかが『背中を向けろ』って言ったから、それに従ったまでだろ」
それを聞いたほのかが、鼻で笑う。
「私は言っただけよ? 黙って従ったのは琢人くんじゃない。反抗もできたはずよ。つまり相手の言いなり……だから受けよ。攻めなら、私に『なんでだ?』って問い詰める可能性があるわ。それにこのマジックだって、奪い取れたしね♪」
「そ、そんな……」
彼女の言うことも、あながち間違っていないような気がする。
この俺が受け属性だと?
み、認めたくない……。