気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
ショタスレイヤー
「うう……新宮さんには、この姿を見られたくなかったですぅ」
自分で着ておいて、よくもまあ言えたもんだな。
しかし、改めて彼の着ているコスプレ衣装を上から下まで眺めて見ると……。
確かに卑猥だ。
よく見るバニーガールとは違い、全身真っ白だ。
バニースーツにストッキング、ヒールまで全てホワイトで統一している。
天然パーマのショートボブからは、白くて長い耳が2つ生えている。
頬はリンゴのように赤く、とても幼い。俺の一個下には見えない顔つきだ。
こちらを伺いながら、身体をくねくねとさせ、股間を隠しているように感じる。
確かに際どいバニースーツだから、自ずと彼のシンボルが誇張されてしまうのは仕方ない。
俺だったら、絶対にフサフサの毛が大量にはみ出る自信はあるな……。
「ん?」
そう考えると、思わず首を傾げてしまう。
隣りに立っているリキも、別府温泉で裸を見たから、ちゃんと毛が生えていたのをよく覚えている。それも剛毛。
股間だけじゃない、すね毛もだ。
俺も別に濃いってわけじゃないが、ちゃんと第二次性徴を迎えた自負がある。
しかし……ミハイルといい、この住吉 一もツルツルのピカピカじゃないか。
バニースーツの下に、ストッキングを履いているとはいえ、毛が一本も無い。
女より女らしい細い脚……う~む、非常に貴重な生物だな。
しばらく、ジーッと彼の身体を眺める。
特に注目したのは、一の股間。ふぐりだ。
腰を屈めて、至近距離からじっくりと見つめる……。
顎に手をやり、考え込む。
「これは……」
最近、ずっと悩んでいた。
俺はミハイルに欲情してしまう男……つまり、“そっち”の気があるのではないか、と。
可愛ければ、誰にでも股間が反応してしまう。節操のない男……。
否定したくてもできない現状に困惑していたが。
一の股間は、確かに一般的な男性のサイズからすれば、小ぶりで可愛らしいのかもしれない。
しかし、見ていても全然感じないんだ。
1ミリも興奮できない。
つまり……俺はノンケと言うことだ!
そう確信した俺は、一に「ちょっと、こっちに尻を向けてくれ」と頼む。
当然、彼は恥ずかしがるが、年上の俺に対しては従順だ。
「こう、ですか?」
そう言って、ウサギの尻尾がついたバニースーツを俺に見せつける。
ミハイルほどではないが、美尻だ。
小さくて柔らかそう。
「悪いが、少し触ってもいいか?」
「えぇ!? そ、そんな! 新宮さん……なんで」
顔を真っ赤にしている一を無視して、俺はエナメル生地の尻を撫で回す。
「ふむ……おお。いやらしいケツだ。しかし、それだけだな」
つい本音が出てしまった。
だが、これでようやく安心できる。
股間はピクリともしない。
やはり、俺はノン気だぜ!
一の尻を揉み揉みしながら、ひとり頷いていると、叫び声が上がる。
「うわぁん! 酷いです!」
上を見上げると、バニーボーイが泣きじゃくっていた。
「あ、悪い……男同士だからいいかなって」
「良くないです! 僕のコスを……いやらしいって酷いですよぉ」
「いや、コスのことを言ったんじゃなくてだな」
言い訳しながらも、彼の尻を揉みほぐしているが。
泣き止まない一を見て、リキが間に入ってきた。
「タクオ! お前、なに年下の子を泣かせてんだ! 早く離れてやれ」
首根っこを掴まれ、無理やり一から引き離される。
ミハイルに負けない馬鹿力だから、冷たい大理石に顔を叩きつけられた。
「いって!」
そんな俺を無視して、リキは泣いている一の頭を優しく撫でてやる。
「なあ。もうあんまり泣くなよ。俺はそのコスプレってのか? 良いと思うぜ」
そう言って、親指を立てて笑う。
「え……僕のコス。気持ち悪いとか、嫌らしいとか思わないんですか? 男の人からは結構嫌われるのに」
「そんなこと思わねーよ。自信を持てって。俺は好きだぜ。そのコスプレ」
リキとしては、あくまでも、泣いている一を励ますための言葉だと思うが……。
言われた本人が、そうは受けとめていないようで。
涙で潤んだ瞳をリキへと向ける。
「スキ? 本当……ですか」
「ああ。マジだよ。好きなことやものは、堂々としている方がカッコイイと思うぜ。俺の知り合いが教えてくれたことさ」
話の流れからして、その教えは腐女子のほのかから、教わったものだろう。
あいつのは、堂々と晒しちゃダメなやつなのに……。
その後、BL編集部から地味な腐女子……の社員が降りてきて。
リキを大事な客として、エレベーターに案内した。
「じゃあな、タクオ! それに、一もな!」
なんて、笑顔で手を振るリキ先輩。
「おお。また学校でな」
と俺も床から手を振って見せる。
だって、未だに身体が痛むからね。
それにしても……俺がセクハラしたおじさんみたいな扱いになっていて、ムカつくわ。
受付男子である一といえば、終始俺に尻を向けたまま。
エレベーターに乗り込むリキを見つめていたからだ。
「……素敵な人」
俺は耳を疑った。
思わず、立ち上がり一に声をかける。
「おい、一。何を言っているんだ?」
「あの……ダンディーなおじ様。なんて言うお名前ですか?」
そう言って、瞳をキラキラと輝かせる。
涙の輝きではない。
これはときめく女子に近いものだ。
「え、リキのことか?」
「リキ様……なんてカッコイイお名前なんでしょう。僕、ズキュンって来ちゃいました」
「は? なにが?」
思わず、アホな声が出てしまう。
「僕のコスを褒めてくれる男性。初めてなんです……なんだか、胸がポカポカして。なんだろう、この気持ち」
と胸の前で、祈るように手を合わせるバニーボーイ。
「……」
博多ってマジな話。
多いのかな……そっち界隈。
とりあえず、俺は知らねっと。