気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
あんちゃん、ハーレムなんて幻想だよ……。
「ところで、今回の打ち合わせって一体なんだ?」
俺がそう問いかけると、白金は目を見開き、手のひらをポンと叩く。
「そうでした! 実はですね。DOセンセイの『気にヤン』の続刊が、もう予約段階に入りまして……。すごい人気なんですよぉ~」
「ふ~ん」
自分の実力じゃないから、何も嬉しくない。
起きた出来事を書いたに過ぎないものだからな。
「もう、いつもそんな反応ですよねぇ……それでですね。来年の初めにまたもう一冊ぐらい売り出したいって、編集長がうるさいんですよぉ~」
「おい……まだ2巻と3巻が発売していない状態で、もう4巻の打ち合わせか?」
早すぎだろ。俺を殺す気か?
「人気な時に売りまくった方がいいじゃないですかぁ~ DOセンセイって、元々オワコン作家だったし♪」
クソが!
※
「つまり、次巻に使えるようなネタ……ヒロインとのエピソードがあるか、確かめたかったのか?」
「そうです! 何か進展とかありませんか? キスしたとか? おっぱい揉んだとか!?」
「……」
全部、経験したとは言いたくない。事故だし。
わざとらしく、咳ばらいして、話題を変える。
「ごほん! そうだな……ヒロインとして、もう一人使えそうな女が現れたぞ」
「本当ですか!? 是非とも、教えてください!」
もちろん、10年前に出会った幼馴染の冷泉 マリアのことだ。
正直、こいつに話すのは嫌だったが……。
やはり、マリアを物語に登場させないことには、盛り上がらないだろう。
俺は白金に、彼女との出会いから、10年ぶりに再会したこと。
それから、婚約した関係であり、アンナに瓜二つなハーフ美少女。
心臓の手術を終えて、わざわざアメリカから福岡まで、俺のために帰国したハイスペック女子だと、説明した。
話を終える頃、白金は目を見開き、顎が外れるぐらい大きく口を開いていた。
「ああ……そ、そんな。あのDOセンセイが……」
どうやら、かなり驚いているようだ。
「俺としてもマリアのことは、再会するまで忘れていた存在だ。正直、困惑している。アンナに似ているし……」
だが、白金には伝えていないことがある。
アンナにだけ、おてんてんがついている所だ。
同じルックスなら、絶対に女の子を選ぶはずなのに……。
アンナに配慮している自分に、戸惑っている。
白金はしばらく、「う~ん」と唸りながら、腕を組んで考え込む。
「まさか、クソ陰キャで童貞オタクのDOセンセイに、そんなエロゲーみたいな過去があったとは……驚きました」
お前の俺に対するイメージにも、ドン引きだよ。
「俺としては、アンナがメインヒロインだと思っている。だから、どういう風に扱っていいのか……なるだけ、マリアも傷つけたくないんだ」
そう言うと、白金は机をバシバシと叩きながら、笑い始めた。
「ぷぎゃああ! なに、いっちょ前に格好つけてんすか? もうハーレム気取りですか? モテ期が来たとか、勘違いしてるクソ野郎ですね!」
この野郎、人が真面目に相談しているのに。
「お前、おちょくってんのか?」
「してませんよぉ~ いいですか? 考えすぎなんですよ、DOセンセイは」
と言いながらも、ニヤニヤが止まらない白金。
「考えすぎだと?」
「ええ。童貞が初めて女の子にかまってもらったから、色々とパニクってるんですよ。もっと気楽にアンナちゃんとも、マリアちゃんとも取材を楽しめばいいんです♪」
「楽しむ……?」
白金に言われて、ようやく思い出した。
初心ってやつを。
そうだ。俺は元々、一ツ橋高校に入学したのは、恋愛を取材するためだ。
小説のために、色んな人間と交流を求めたに過ぎない。
ただの仕事……なら、割りきれば良い。
俯いて、考え込んでいると、白金が俺の肩に触れて、こう言った。
「DOセンセイ。やっとLOVEらしくなってきましたね♪ 楽しいでしょ?」
「え……」
「ていうか、クッソ面白い展開ですやん? ラブコメに修羅場とか、絶対いりますよぉ~ おもしれぇ! DOセンセイ。誰かに刺されても安心してください。ちゃんと経費で落としてあげますから♪」
この野郎……他人事だと思いやがって。
ていうか、経費じゃなくて、保険をかけておけ!
その前に刺されたら、死ぬわ!