気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!
隠した方が魅力的なこともある
アンナに指定された場所は、もうお馴染の博多駅。中央広場にある黒田節の像だ。
今回の取材は……なんと、赤ちゃん。
彼女と電話を終えた後、俺はしばらく考えてみたが。
思いつく所と言えば、産婦人科とか、保育園ぐらい。
一体、アンナは何を考えているんだ?
母里《ぼり》太兵衛という、難しい顔をしたおじ様の下で、俺は一人考えこむ。
アンナが想像妊娠でもしたのかと……。
じっと地面を見つめていると、目の前に白く細い脚が2つ並ぶ。
「ごめん、遅くなったね☆ お待たせ☆」
視線を上にやると、そこには今日の取材対象である美少女が立っていた。
「ああ……久しぶりだな。アンナ」
俺がそう言うと、彼女は必死に小さな胸を抑えて、息を整える。
「ハァハァ、うん☆ タッくん☆」
どうやら急いで走って来たようだ。
額にも少し、汗が滲んでいる。
そんなに待ったわけじゃないから、焦らなくても良かったのに……。
今日のファッションと言えば、これまたガーリーに仕上げている。
トップスはピンクのフリルケープ。胸元には、彼女らしい大きなリボンがついている。
そしてボトムスも、ケープに合わせたような同系色のプリーツが入ったミニスカート。
その姿に見惚れてしまいそうだが……。
周りを歩いていた男たちが、振り返ってまで、彼女の顔を確かめてしまう可愛さだ。
思わず「俺の女だ!」と叫びたくなる。
って、違う違う。こいつは男だ。
雑念を振り払うように、頭を左右に振る。
「無理して急がなくても良かったんだぞ?」
「嫌だよ……アンナのせいで、タッくんとのデートの時間が削られたら、悲しいもん」
と、頬を膨らませる女装男子。
まあ、可愛いけど。
「そうか。しかし、何かあったのか? そんなに焦るアンナは珍しく感じる」
俺がそう言うと彼女は頬を赤らめて、俯いてしまった。
「さ、寒くなってきたから、その……初めて履いてみたの。慣れないから、時間かかっちゃった」
そう言って、彼女は足もとを指差す。
「へ?」
アンナ自慢の美脚はいつも通り、頬ずりしたくなりそうだが……。
何か違和感を感じる。
そうだ、素足じゃない。
白いストッキングを履いている。
「これは!?」
驚きのあまり、思わず口から出してしまった。
アンナと言えば、今までミニ丈でも、必ず素足。
それはそれで、最高だったのだが……。
しかし、薄いデニールのストッキングを履いていただけで、なんだこの背徳感は?
アンナの細くて長い脚を、白のパンストで覆ってしまったというのに……。
逆に新鮮で、興奮してしまう!
これは、アレだ。
制服フェチに近い。
典型的な看護婦さん。ピンクのナース服に、白ストッキング……。
なんてこった。
股間が暴走しまくりじゃないか。
前かがみになりながら、アンナの服装を褒める。
「きょ、今日のアンナ……すごく可愛いと思うぞ」
「ホント!? 自信なかったから、嬉しい~☆」
僕も非常に嬉しいです。
ただ、あまり挑戦的なファッションは、やめて頂きたい。
歩けなくなるから……。
※
「ところで、今日の取材……赤ちゃんだっけか? 一体、そんなもん。どこでするんだ?」
「ああ、アンナとタッくんの赤ちゃんだよね☆ それだったら、博多からバスに乗ったら、会えるよ☆」
「は?」
いつ、生まれたの?
俺たちの子供って……。
アンナが言うには、筑紫口からバスに乗って、目的地へと向かうらしい。
今、俺たちが立っている博多口とは、反対方向だ。
一旦、駅舎のあるJR博多シティの中を通らないと行けない。
説明不十分だが、とりあえず、アンナに手を引っ張られて、JR博多シティのビル内へと入る。
アンナが「早くはやく」と急かすせいか、俺の手を掴む力が強まる。
「いてててっ!」
余りの痛さだったので、手を振りほどこうとした瞬間。
アンナの足もとに違和感を感じた。
左脚の太ももに、縦の線が見える。
「アンナ! なんか、太ももにキズができていないか?」
俺がそう言うと、彼女は振り返って、目を丸くする。
「え? キズ……?」
「うん。ほれ、太ももに何か白い線が出ているが、これはケガしたんじゃないのか?」
彼女の太ももを指差すと、ようやく立ち止まる。
俺から見て、目立つ線と言うことは、彼女からすれば、太ももの裏側だ。
大胆にもスカートの裾を上げて、太ももを確認するアンナ。
パンツ、見えそう……ラッキー。
「あ!? 伝線してるぅ!」
その線を見つけた瞬間、アンナの顔は一気に青ざめる。
小さな唇を大きく開いて。
「で、電線? ビルの中には電柱なんて、ないぞ?」
「違うよ! ストッキングが伝線したの!」
「はぁ?」
意味が分からない俺は、アホな声が出てしまう。
でんせんって、なんだ……?
新型のウイルスが伝染でもしたのかな。