それはきっと、甘い罠。
さっきまでキスをおねだりしていた女の子が打って変わって冷ややかな目を向けても何のその。
鞍馬秋臣君の周りにはまた違う女の子たちが集まっていた。
「うわっ、相変わらず学校一モテる男は、席を取り囲まれるほどのハーレム状態で羨ましいね~。
あいつの姿見えないんだけど。」
「……」
「聞いてんの?このみ」
「へっ?あっ、うん、そうだね……」
「……?なんか元気ないじゃん、どうした?」
「ううん……なんでもないよ。ちょっと考え事」
「ふーん?なにか悩み事ならいつでも僕に相談してよね。」
「うん、ありがとうなっちゃん。」
私の前の席の子からイスを借りて、向かい合いながら机に肘をつけるなっちゃんこと、照島名雪ちゃんは私の幼なじみ兼親友。
幼稚園生の頃からの付き合いで、可愛いから『なっちゃん』『なっちゃん』って『ちゃん』付けで今も呼んでるけど。
なっちゃんは自分が"可愛い"って自覚しているせいか、男の人だけど『可愛い』を受け入れている。
ふわふわした茶髪に大きな瞳。
まつ毛はクラスにいる誰よりも長く、芸能人並みに顔がとにかく小さい。
鼻筋は通っていて、唇は手入れされていてカサつきがない。
……なっちゃんは天使だ。
いつ見てもそう思ってしまうくらい、"可愛い"が私の隣にはいつもいる。