それはきっと、甘い罠。
「照島と藍野ちゃん。
さっきからふたりで俺の噂してるけど、何々?俺にも聞かせて」
机に影を落とした人は、私となっちゃんが噂をしていた張本人、鞍馬君だった。
どっ、どうしよう。
別に文句を言っていたわけじゃないのに、鞍馬君目の前にするとドキドキしちゃう。
なっちゃん以外の男の人って基本苦手なんだよね……私。
「別に。可愛さで言ったら鞍馬より僕の方が上だねって話をしてただけ。
てか僕とこのみの会話に入ってこないでよ」
私の気まずさを感じ取ったのか、なっちゃんが代わりに口を開いて鞍馬君を追い返そうとしてくれている。
だけど鞍馬君はいつまで経っても私の机から手を離してくれない。
それどころか。
「うーん?俺と照島よりも一番可愛いのは藍野ちゃんだと思うよ。
ねー、藍野ちゃん。」
俯く私に、屈んで目線を合わせてくる鞍馬君。
急に目が合ってしまって、心臓がうるさいくらいにバクバク鳴ってる。
ど、どうしよう。
なにか言い返さないといけないのに。
緊張しすぎて声がでない。