「槙野だったら、何味にする?」
屋上のアスファルトに直接座ってフェンスにもたれる。カシャンっと音がする。今日は雪が降っているからか、珍しく屋上には、僕一人だけだ。
すごく寒いし、大降りなわけじゃないけれどあまり長いことここに居たら濡れてしまいそうだった。けれど、静かで心地よかった。
僕は両手の中に焼きそばパンを置いたまま、目を瞑った。雪の匂いを嗅ぐ様に、少しだけ上を向いた。顔の上に落ちてくる雪が冷たい。匂いはしない。
「風邪引くぞ。」
頭の上から言われて、僕は目を瞑ったまま、言った。
「大丈夫だよ。」
「何を根拠に言ってんだよ。」
「どうしたの。」
「槙野を探してたんだよ。」
「何で。」
「今日、ヤヨが休みだから拗ねてこんな所居んのか?」
僕はゆっくり瞼を上げて、立ったまま僕を見下ろしている涼太の顔を見た。僕が立っていても座っていても、涼太には見下ろされっぱなしだけど。
ヤヨちゃんは今日、風邪を引いて学校を休んでいる。登校前にトークが来ていて、「大丈夫?」って送信したら、私の分もりょうちゃんとお話ししてきてって返事がきた。
気持ちはけっこう元気らしい。
「風邪までヤヨとおそろいにすんなよ。」
「そんなことしないよ。僕は風邪引かないから。どんなにずぶ濡れになっても。ほら、あの時だって…」
僕は、自分で「あの日」のことを掘り返そうとしてしまった。アレは、まるで僕と涼太の罪の意識みたいに、隠してきたはずだったのに。
涼太が僕の隣に座った。座ってもやっぱり、目線が高い。
「やっぱお前、馬鹿だよ。」
「馬鹿は風邪引かないって?」
涼太は一瞬黙って、そうかもなって小さく呟いた。
「パン、食べないの。」
「んー?うん…お腹空いたら次の休み時間に食べるよ。」
両手で持ったままの焼きそばパンの袋に雪が水滴となって一粒、二粒と増えていく。
涼太がいつも食べている焼きそばパンを、僕は今日初めて買った。
ヤヨちゃんが涼太に近づきたくて食べていた味を、知りたかったから。
すごく寒いし、大降りなわけじゃないけれどあまり長いことここに居たら濡れてしまいそうだった。けれど、静かで心地よかった。
僕は両手の中に焼きそばパンを置いたまま、目を瞑った。雪の匂いを嗅ぐ様に、少しだけ上を向いた。顔の上に落ちてくる雪が冷たい。匂いはしない。
「風邪引くぞ。」
頭の上から言われて、僕は目を瞑ったまま、言った。
「大丈夫だよ。」
「何を根拠に言ってんだよ。」
「どうしたの。」
「槙野を探してたんだよ。」
「何で。」
「今日、ヤヨが休みだから拗ねてこんな所居んのか?」
僕はゆっくり瞼を上げて、立ったまま僕を見下ろしている涼太の顔を見た。僕が立っていても座っていても、涼太には見下ろされっぱなしだけど。
ヤヨちゃんは今日、風邪を引いて学校を休んでいる。登校前にトークが来ていて、「大丈夫?」って送信したら、私の分もりょうちゃんとお話ししてきてって返事がきた。
気持ちはけっこう元気らしい。
「風邪までヤヨとおそろいにすんなよ。」
「そんなことしないよ。僕は風邪引かないから。どんなにずぶ濡れになっても。ほら、あの時だって…」
僕は、自分で「あの日」のことを掘り返そうとしてしまった。アレは、まるで僕と涼太の罪の意識みたいに、隠してきたはずだったのに。
涼太が僕の隣に座った。座ってもやっぱり、目線が高い。
「やっぱお前、馬鹿だよ。」
「馬鹿は風邪引かないって?」
涼太は一瞬黙って、そうかもなって小さく呟いた。
「パン、食べないの。」
「んー?うん…お腹空いたら次の休み時間に食べるよ。」
両手で持ったままの焼きそばパンの袋に雪が水滴となって一粒、二粒と増えていく。
涼太がいつも食べている焼きそばパンを、僕は今日初めて買った。
ヤヨちゃんが涼太に近づきたくて食べていた味を、知りたかったから。