「槙野だったら、何味にする？」

「槙野ー！まーきーのー！」

体を揺さぶられる感覚で目が覚めた。僕は本当に眠っていたらしい。目の前には僕を覗き込むヤヨちゃんの顔があった。可愛いって思った。

「ねぇ、大丈夫？本当に体調悪かったの？」

本当に心配しているって表情のヤヨちゃんに、僕はまだ虚な思考のまま上半身を起こして言った。

「ごめんね。大丈夫。寝不足だったのかな。ちょっと寝たらすっきりした。」

「本当に？お昼どうする？もう少し寝てる？」

「ううん。お腹空いたし行くよ。ありがとう、迎えに来てくれて。」

さっきまで不貞腐れていたくせに、こうやって迎えに来てくれたヤヨちゃんを見ただけで幸せになった。僕は単純だ。でもヤヨちゃんの一挙一動で幸せになれるなら、一生単純なままの僕でいい。

保健室の先生に涼太と同じように軽く頭を下げて保健室を出る。僕の背中に向かって先生が「鉄分が多く含まれてる物食べなさいよ！」と投げかけた。振り向いたら先生はまた茶目っ気たっぷりの目で笑っていた。