「槙野だったら、何味にする?」
「それでさ、槙野、一緒に観ようよ。」

「はい?」

「怖いテレビ、一緒に観よう。」

「うん?どうやって。」

思いがけない誘いに僕の脳内はクエスチョンマークだらけになった。「カラオケ行こうよ」くらいのノリでナチュラルに誘ってくる。

「えーっと、あ!ほら、今流行りのリモート?」

「僕、パソコン持ってないよ。」

「私も。」

「えー。」

「じゃあさ、通話かけたままで!」

「それじゃあ一人で観てるのとあんまり変わんないよ。」

脳内はクエスチョンマークだらけのまま。でもちょっと面白くなってきた。ヤヨちゃんはどうせ後悔するくせに、どんな手を使ってでも観たいらしい。

「ヤヨちゃん、うちに泊まりに来る?」

ヤヨちゃんが「カラオケ行こうよ」くらいのノリでナチュラルに誘うから、僕も「映画行こうよ」くらいのノリで誘ってしまった。自分で言ったくせに自分が一番ビックリしてしまって、椅子の背もたれにダラダラと寄り掛かっていた体を勢いよく起こす。椅子がギシっと音を立てる。僕は生唾を飲んだ。
< 23 / 139 >

この作品をシェア

pagetop