「槙野だったら、何味にする?」
「行こうかな。」

イコウカナ?????

「はい。…え?うん…?」

「だから、泊まり。行こうかな。」

マジ?

「あー、えっと、今日僕一人なんだけど。家。」

「そうなんだ。お母さん達は?」

ヤヨちゃんはまったく動じない。自分から誘っといてナンだけど、僕が気にしすぎなのか?きっとそうなんだ。だってもう高校二年生だもん。僕はまだ十六歳だけど、ヤヨちゃんは四月でとっくに十七歳になってるし、僕だってもうすぐ十七歳になる。十七歳にもなれば、親が居ない家で二人でお泊まりなんて普通なんだ。僕が「遅れてる」んだ。男だろうが女だろうが二人だろうが百人だろうが…。

「僕んちはほら、お盆には母方の実家に親戚達が集まるからさ。昨日から里帰りっていうの?してるんだ。僕はそういうの苦手だからさ、高校生にもなったし、宿題もあるし、十五日とか十六日までは一人暮らし!去年もそうだった。」

僕の両親が放任主義なわけじゃない。世間から見たら十六歳の子供を一人で数日間も家に残しておくなんて、と思う人もいるだろう。でも世の中には十六歳とか十七歳で一人暮らしをしている人だってきっといる。両親は「何事も経験だ」って、僕の意見は尊重してくれる。

親戚達の集まりが苦手っていうのは本当だ。年齢を重ねるたびに進路はどうするんだとか、僕の格好がどうだとか、ああだこうだ言われることが苦痛になってきた。でももっと、里帰りしてる間にヤヨちゃんからの誘いがあったら物凄く後悔するから。その勘はやっぱり当たってた。
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