「槙野だったら、何味にする?」
「いらっしゃい。暑かったでしょ。」

「今日はね、いつもより風があって少しだけ涼しいよ。でもちょっと汗かいちゃったかも。お風呂入ってきたのになぁ。」

「入ってきたの?」

やっぱりお風呂は使わないかぁとちょっと、ちょっとだけ思ってしまった。

「お風呂入ったのに髪の毛編み込んだんだね。似合ってる。」

「身だしなみよ、身だしなみ。」

ヤヨちゃんはさっきとは違う種類の笑顔を作った。さっきは少女の笑顔。今のは僕達よりも大人みたいな笑顔だった。これが十六歳と十七歳の差なのかもしれない。同級生だけど。

「槙野、シャワー借りてもいい?汗流したいな。」

「やっぱり使うよね。………ん!?使うの!?」

「ダメ?」

「や、ダメじゃない。全然…いいの?」

「うん?槙野がいいなら。」

まさかまさかまさか。もう言葉にならない。思考が追いつかない。無防備すぎないか?もうこの子、よく分かんないよ…って思いながらもドキドキがおさまらない。

お中元だかお歳暮だかで貰ったまま仕舞ってあったバスタオルを出してきてヤヨちゃんに渡す。一度も使っていないからあんまり吸水しないかも。だけどヤヨちゃんは新品をありがとうって言って、脱衣所のドアを閉めた。

シャワーの音がする。このサウンドなら一生聴いていたい。

はーい、最低最低と自分を戒めながらリビングに行って、しっかりドアを閉めた。
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