「槙野だったら、何味にする?」
「あ。ごめんね、鞄持ったままだったね。席あっちだよ。」
ヤヨちゃんは僕の腕をパッと離して、そのまま指をさす。ガッカリした気持ちに気づかれないように、僕は「うん。」って笑って見せた。
黒板に「席は名簿順」と書いてあって、教卓にクラス名簿のコピーが置いてある。
みんな、クラスメイトの名前を確認して自分の出席番号と、席を指差し数えている。
僕はヤヨちゃんが教えてくれたから、その行為をしないで、席につけた。
僕が「槙野」で、ヤヨちゃんが「町田」。ヤヨちゃんの前が僕の特等席だ。
カバンを机のサイドに掛けて、椅子を引いて座りかける僕に、ヤヨちゃんが「なんか懐かしいね」って声を弾ませた。
座ってから「懐かしい?」とヤヨちゃんを見ながら訊くと、「入学したばっかりの時も、最初は前と後ろだったよね。名簿順で座ることなんて最初の席替えがくる時までくらいしか無いし。なんかレアだよね。」とちょっとうれしそうに言う。
入学式の日、人見知りの僕はひどく緊張していて、今日みたいにクラス分けの模造紙に目を滑らせながら、涼太と同じ模造紙上に自分の名前があったことに心底安堵していた。
そしてまた、今日と同じように僕の隣にあった名前。
「まちだやよい。」
その日を思い出しながら口にした僕を、ヤヨちゃんは不思議そうに見つめた。
「ううん。僕の後ろがヤヨちゃんで良かったなって。」
今の言葉は僕にしては上出来。
「好きだよ」って告げるくらい、勇気を出した言葉だ。
「私も!うれしい。」
僕もうれしかった。
とことんくじ運の悪い僕は、ヤヨちゃんと近くになれることなんて、本当にクラス替えの瞬間くらいしか無い。もしも三年生になってクラスが離れてしまったら、この特等席はこの瞬間でおしまいだ。
ずっと続けばいいのに。
でもずっとなんて無いから。
ずっとがあればいいのになぁ。
ヤヨちゃんは僕の腕をパッと離して、そのまま指をさす。ガッカリした気持ちに気づかれないように、僕は「うん。」って笑って見せた。
黒板に「席は名簿順」と書いてあって、教卓にクラス名簿のコピーが置いてある。
みんな、クラスメイトの名前を確認して自分の出席番号と、席を指差し数えている。
僕はヤヨちゃんが教えてくれたから、その行為をしないで、席につけた。
僕が「槙野」で、ヤヨちゃんが「町田」。ヤヨちゃんの前が僕の特等席だ。
カバンを机のサイドに掛けて、椅子を引いて座りかける僕に、ヤヨちゃんが「なんか懐かしいね」って声を弾ませた。
座ってから「懐かしい?」とヤヨちゃんを見ながら訊くと、「入学したばっかりの時も、最初は前と後ろだったよね。名簿順で座ることなんて最初の席替えがくる時までくらいしか無いし。なんかレアだよね。」とちょっとうれしそうに言う。
入学式の日、人見知りの僕はひどく緊張していて、今日みたいにクラス分けの模造紙に目を滑らせながら、涼太と同じ模造紙上に自分の名前があったことに心底安堵していた。
そしてまた、今日と同じように僕の隣にあった名前。
「まちだやよい。」
その日を思い出しながら口にした僕を、ヤヨちゃんは不思議そうに見つめた。
「ううん。僕の後ろがヤヨちゃんで良かったなって。」
今の言葉は僕にしては上出来。
「好きだよ」って告げるくらい、勇気を出した言葉だ。
「私も!うれしい。」
僕もうれしかった。
とことんくじ運の悪い僕は、ヤヨちゃんと近くになれることなんて、本当にクラス替えの瞬間くらいしか無い。もしも三年生になってクラスが離れてしまったら、この特等席はこの瞬間でおしまいだ。
ずっと続けばいいのに。
でもずっとなんて無いから。
ずっとがあればいいのになぁ。