「槙野だったら、何味にする?」
既に何人かの生徒と、担任ももう教室に居た。空調もほどよく設定されていて、汗が引いていくのを感じる。それでも汗で張り付いた制服が気持ち悪くて、下敷きなんかを使ってみんなパタパタと扇いでいる。

いつもだったら休み時間なんかはみんなガヤガヤと騒いでいるけれど、今日は担任が教室に居るからか、すぐに席に着いていて、ヒソヒソ話以外は喋り声はあまり聴こえない。

クラス全員が揃ったところで担任が言った。

「席替えするぞー。」

教室は一瞬静まり返って、シンとした後、一気に歓声が爆発した。

「え!?今日!?」と言う声に「始業式なんかやること無いだろ。」と担任が返す。もちろん僕の心も躍った。四月から随分待った席替えだ。本当に長かった…。僕は今までにないくらい、神頼みした。ヤヨちゃんを見ると、膝の上で小さく手のひらを組んでいることが分かった。

ヤヨちゃん、ごめんね。今はヤヨちゃんの幸せを一番には願ってあげられない。今日だけはどうか許して。僕がくじを引く順番まで、ただ下を向いてジッと願った。
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