「槙野だったら、何味にする?」
「ごめん。まだ待っててくれたんだな。」

窓から見ている僕とヤヨちゃんに気がついて、校舎側に近づいてきた涼太が、涼太よりもずっと高い所に居る僕達に聞こえるように、声を張り上げた。

ヤヨちゃんも同じように大きい声で返す。

「こっちこそごめんねー!気になって集中できないよね。」

「平気。もう行くよ!」

涼太がまた大声を出して、僕達にひらひらと手を振ってから、またサッカー部の輪の中に戻っていく。遠目からでも、サッカー部員達に冷やかされているのが分かる。

「ヤヨちゃんとのこと」をだ。そこに僕は決して含まれない。
誰がどう見たって、ヤヨちゃんと涼太は付き合っていた。ずっと同じクラスだから、クラスのほとんどがそう思ってるだろうし、今みたいに不特定多数の前でこんなことやってるんだから、学年の中でだって、そう思われてるだろう。この中で完全に「邪魔者」は、僕だった。

本当のことを知っているのは僕達三人だけ。僕の本当のことを知っているのは涼太と僕。

いや、僕だけだ。
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