「槙野だったら、何味にする?」
眠りから覚めて、僕の体は今日に在って、昨日までの僕の思考も想いも昨日に在って、だけど今日も変わらず僕はヤヨちゃんが好きで、だからどうせ今日も繰り返し僕はうじうじしているんだろうなぁなんて思っていたら、さすがに嫌になってきて、僕は思いっきり窓のカーテンを開けた。
全然僕の趣味じゃない、生成に薄めのブラウンのチェック柄。母さんが買ってきた。本当に嫌だって拒否したけれど、新しい物に変えてくれる気配も無くて、そのうち自然に諦めていた。
今は、ヤヨちゃんの浴衣にちょっと似ているって思ってからは結構気に入っている。

窓を開けるとヒヤッとした風が流れてくる。雪は降っていない。夜のうちに雨になって、今は所々白い所もあるけれど、ほとんどアスファルトが湿っている程度だった。

「晴れだ…。」

声にしてみると更に現実感を増して、そして段々と久しぶりの快晴を眩しいなって思った。
急いで支度をして外に飛び出した。
昨日のような、雪を踏むギュッという音はしない。後ろを振り返っても足跡も無い。
僕はいつもより早足で学校に向かった。

今日はヤヨちゃんと何を喋ろう。
太陽の話、空が水色な話、アスファルトが渇いているって話。
どれも好きな女の子にする話として正しいのかは分からなかったけれど、明日にはまた雪が降るかもしれない。
だから今日しかないって思った。

かき氷の味は、それからゆっくり考えても大丈夫って思った。
時々なら、僕がしたい話をしても、ヤヨちゃんはきっと楽しそうにしてくれるんじゃないかって、僕は珍しく前向きな気持ちだった。
雪が降らないだけでこんなにもワクワクするなんて、思っているよりも僕はずっと子供なのだろう。
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