「槙野だったら、何味にする?」
「え…、何?…なんで?」

ヤヨちゃんが突拍子もないことを言うから僕はビックリして挙動不審に返事をしてしまった。でも、もう一度僕を見たヤヨちゃんの目は真剣で、冗談を言ってるわけじゃないって分かった。

「やっぱり槙野、気づいてないんだね。りょうちゃんがいつも心配そうに槙野のこと見てること。いつも一番に槙野のこと考えてること。りょうちゃんが気にかけてるのはいつも、いつもいつも槙野だった。」

ヤヨちゃんの声が泣きそうな声に変わる。僕は正直意味が分からなくて、動揺したままだった。

「それは…だって、それは!涼太が過保護なだけっていうか…。僕が色んなところでしっかりしてないから気になるだけなんだと思うし。
好きとか絶対に無い。だってそれじゃあ…、おかしいよ。」

「おかしい?」

「おかしいでしょ。涼太が僕を好きなんて。」

「じゃあ、槙野が私を好きだってことも?おかしいの?」

「え…。」

喉がカラカラに乾く。そっと生唾を飲み込んでみたけれど、喉の奥がガサつく様な、嫌な感じがした。ヤヨちゃん…何で…。

「気づいてないと思ってた?やっぱり槙野、鈍感だよ。」

ヤヨちゃんが呆れた様に言う。いつからなんだろうとか、どうでもいいことを思った。
いつから?一年生の頃にはもう知っていたの?それとも去年のお泊まり?風邪を引いた時?僕がヤヨちゃんを好きだってこと、知っていたから寝たふりをしたの?本当に寝たふりなんだったら、それでも寂しい時に僕を必要としていたのなら、ヤヨちゃんは…酷い。

ヤヨちゃんがいつから僕の気持ちに気づいていたんだとしても、知られていることには変わりないし、ヤヨちゃんの気持ちだって今ハッキリと分かっている。この状況が変わらないってことも。
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