くすんだ心、いつか透明になる日まで
宏樹は表情を崩すことなく、優しい声でそう言った。

「……私、どうしたらいいのかな……辛いよ、苦しいよ……」

私の瞳から、涙が零れ落ちる。それを見た宏樹は、私を無言で抱き締めた。

「泣きたいなら、我慢しなくていいんだ……」

宏樹の言葉に、私は泣き崩れる。私が泣き止むまで、宏樹は無言で私を抱き締めてくれた。

私が泣き止むと、宏樹は私と目を合わせる。そして、私にキスを落とした。

「……え?」

「俺は、ずっと真由美が好きなんだ……諦めたくても、諦め切れなくて……その、俺と……付き合ってくれないかな……?」

顔を赤くした宏樹は、私から目を逸らすとそう言う。

宏樹を見てるとドキドキして、側を離れたくなくて……そっか、私……宏樹のことが、好きなんだ。

「……はい」

私は、宏樹の言葉に微笑んだ。



宏樹と付き合い始めて、5年。今日、私は宏樹と結婚する。

憧れだった純白のドレスに身を包んで、タキシードを着た宏樹と向かい合っていた。宏樹は、恥ずかしそうに私を見つめている。

「……俺、お前を絶対に幸せにするから」

そう言って、宏樹は私にキスを落とす。

悲しみによってくすんでしまった心が、少し透明になったような気がした。
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