Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
「うん。イブキから聞いてる。最近はもう関わりないみたいだね」
「聞いてる、って……知り合いなの?」
「まあそんなとこ」
うそ……。
心底驚きだった。
本条くんとイブキくんが知り合いなのに対してというよりも、本条くんがなぎ高の人と関わりがあるということに対して。
それに……。
——イブキくんも、わたしのこと覚えてるんだ。
関わりはなくなっても、同じようにわたしの存在を思い出として残していてくれたのだとわかったのは、なんだか嬉しかった。
「今からする話は、平石さんには少し難しい話かもしれないけど」
本条くんが再び、説明口調になる。
少しだけ声のトーンが下がったように思えた。
「ここ数年、なぎ高のやつらは俺たち聡学の生徒には干渉できない状態にあったんだ。それは、暗黙のルールみたいなものでさ」
……暗黙のルール?
そんなものが、学校間には存在するの……?
いったいどんな流れでそんなことになるんだろう。
……そもそも、暗黙のルールなんて曖昧なものに頼らないで、はじめからどの学校でも揉めごとはいけないっていう決まりをつくれば済む話なんじゃ……。
なんて意見は、見当違いなのかな。
言っていた通りに、本条くんの話は疑問点が多くて、難しい。