Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-



「っ、痛……っ」



地面に強く打ちつけた肩が、今更になって酷く痛んだ。



「なに、どうしたの。……肩?」



張り詰めた本条くんの声が聞こえて、



「ちょっとごめん」



ワイシャツのボタンを外される。

恥ずかしがる余裕もなく、右肩の部分だけシャツを引き下ろされた。

前から後ろから、と確認して、……本条くんが顔を歪める。


――その瞬間、隣から舌打ちが聞こえて、わたしはびっくりしてしまった。



「あいつら……」



今まででいちばん低くて、迫力のある本条くんの声。



「ど……どうなってる? 転んだときに、打っちゃって……」

「痣になってる。……あとで病院に連れてくよ」

「えっ、そんな……平気だよ? 自分で行けるから……」

「遠慮しなくていいよ。ここに連れてきた以上、家まで送る予定だったし、ついでにね」

「……ありがとう……。ごめんね。迷惑かけて……」

「謝らないでいい。平石さんはなにも悪くない」



わたしのために、怒ってくれてる。

だけど……こんな本条くん、はじめて見た。

なんというか、荒々しい。


わたしは若干の怯えを抱きながら、



「あの、……聞いておきたい、ことがあるんだけど」

「ん?」



視線を合わせずに、尋ねた。



「わたし、が……どこまでされのたか、……本条くんは、わかる?」


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