Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
再会
「後をつけられてた、……ね」
放課後になると、わたしは人目をかいくぐり、職員用玄関へと急いで。
本条くんと合流したあとも、周りの警戒を怠らず念入りに距離をとりながら、無事に……たぶん、誰にも目撃されることなく、本条家の車へと乗り込むことに成功した。
運転手さんは、1週間前までわたしの送迎を担当してくれていた人。
事情を色々と知ってくれているから、3人きりの車内では、気兼ねなく相談ごとを打ち明けることができた。
「単に制服じゃなけりゃバレないと思って、軽率な行動を起こしたなぎ高のやつだって可能性もあるけど、……どうかな」
本条くんは思考する素振りを見せながら、シートに体重を預ける。
「あいつらも、そこまではバカじゃないと思いたいけどね」
小さな笑いを含んだそのセリフに、わたしはゴクリと息を呑んだ。
そんなことをしたら、どんな目にあうかわかってるはず――。
外へと向けられた本条くんの視線が、そう言いたげに冷たい色を浮かべたのが、窓の反射で見えてしまったから。
わたしは気づかなかったことにして顔を伏せた。
膝の上で絡ませあう自分の指を眺めながら、続ける。
「でもね、わたしと目が合ったら、その人、すぐにいなくなっちゃったから。なにもされなかったし、なぎ高の人とは違うように思えたっていうか……。ただの、勘、なんだけど」
「なるほどね」
言いながら、わたしは密かにヒヤヒヤしていた。
起きたことをそのままそっくり伝えなかったことが、本条くんにバレるかもしれないと思ったから。