Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
夢現
「静かでいいな、ここ」
手を引かれて連れてこられたのは、あの公園だった。
先ほど車から確認したときと同じで、わたしたちの他には誰もいない。
「……近くに、もう少し大きな公園があって……。遊具の種類がたくさんあるし、バスケットゴールなんかもあるし……子供たちはみんなそっちで遊ぶことが多いみたいで」
とは言っても、あたりもすっかり薄暗くなってきたし、小さな子は家に帰る時間だと思うけど。
「ふうん」
心なしか納得したような声が返ってきた。
導かれるまま中に入って、やってきたのはブランコの前。
「ちっせ」
おかしそうに笑いながら座るものだから、ギャップできゅんとしてしまった。
……こんなことするんだ。
可愛いところを見れてしまった、と驚いていると、
「お前は座んねーの?」
不思議そうに見上げられる。
特に断る理由なんてないので、隣のブランコに腰を下ろした。
ゆら、と揺れて、思わず右手で鎖を掴む。
左手は、……まだ彼と繋がったまま。
「あの……」
「ん?」
「手……」
なんて言えばいいかわからなくて、それだけ呟いた。