Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
帰路
翌朝、目覚ましが聞こえてくる前に自然と目が覚めた。
起き上がる気力もないまま、放心したように天井を見つめる。
……ちっとも、眠れた気がしないや。
目を閉じれば、触れ合った唇の感触が蘇ってきてしまって。
その度に胸がどきついて、ソワソワ落ち着かなくなる。
あれは現実だったのかな……なんて疑っては、確かめるためにもはやく約束の時間になってほしいと思う。
もし本当に彼が待っていてくれたとしたら、次はどんな風にふたりの時間を過ごせるんだろうって考えちゃう。
そんなこんなで、だいぶ遅い時間まで意識がはっきりしていた気がする。
この調子じゃ、今日の授業中しんどくなっちゃいそうだ。
ううーん、と寝返りをうてば、枕元に置いてあったスマホが目に入った。
手にとって、ロックを解除する前に、寝ぼけ眼で画面に並ぶ通知をチェックする。
その中のひとつ、本条くんからのメッセージを知らせる表示を見て、——わたしの頭は一気に覚醒した。
待って?
今——何時?
飛び跳ねるように身を起こし、メッセージを確認する。
〈8時ごろに着く予定〉
と、本条くんから。
現在時刻は、――6時23分。
よ、かった……っ。
目覚まし聞き逃して、寝過ごしちゃったのかと思った。
焦ったあ……。
わたしは脱力した。