【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
前世の記憶は婚約破棄とともに
「アーリア・クラークルイス、今この時をもっておまえとの婚約を解消する!」
静まりかえったホールに、若い男の声が響いた。
春先の花の少ない季節に、ふんだんに飾られた美しい生花。惜しげもなくともされたシャンデリアの明かり。
広々としたホールには、きらびやかな衣装を身にまとった人々がつどう。
本来なら卒業を控えた解放感にざわめきが満ちているはずのホールは、いまや静寂に支配されていた。
若者たちの中央に立つのは、まぶしい金色の髪に涼やかな青い瞳の第二王子ヒューバート。
その後ろには、輝くピンクブロンドの髪の少女が瞳を潤ませて立っている。
「おまえは身分をかさに着て、この純粋なエマをおとしめつづけた。おまえのような嫉妬深い卑劣な女は私の妃にふさわしくない」
「な、何……」
――何これどういうこと!?
思わず飛び出しそうになった言葉をとっさに飲みこんだ。
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