【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
もう婚約はこりごりです
真っ暗な世界に、ふっとひと筋の光が差しこんだ。
まぶたが震える。
「あ……アーリア、目が覚めましたか?」
「セドリック、殿下……?」
まぶしい光と思ったのは、朝日を浴びて輝くセドリックの金髪だったらしい。
でも、なぜここにセドリックが? ここって、わたしの部屋の寝台よね?
「昨夜、玄関ホールで倒れたのは覚えていますか? 学園の卒業パーティーから帰ってきたことは?」
不審な顔をしていたのだろう、わたしに向かってセドリックが落ち着いた声で話しかける。
「え、ええ、覚えています。……卒業パーティーで、ヒューバート殿下から婚約破棄を言いわたされて……それで帰宅したら、セドリック殿下が……って、殿下!? 今、朝ですよね、なぜここに!?」
「アーリア、落ち着いて」
思わず飛び起きたわたしの肩を、まだ小さな手が押さえる。
「突然アーリアが倒れたので、心配で付き添っていたのです。医師には疲労だから大丈夫だと言われたのですが、どうしてもそばにいたくて」
「えぇ、あれからずっと? ひと晩中いらしたのですか!?」
「はい、もちろん僕一人ではありませんが……、元気になったようでよかった」
セドリックは可愛らしい顔に、とろけるような笑顔を浮かべていた。その綺麗なお顔が近づいてきて、柔らかい唇がそっとわたしの頬にふれた。