【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 彼女はあれきり休んでいるらしく、いろんな噂が飛び交っている。
 学園はある意味、社交界の縮図だ。怖い怖い。

「セドリックこそ、想いを寄せられることが多いのだから、気をつけてくださいね」

「僕が興味を持たれているとしたら、学園で数少ない既婚者だからさ。みんなから見たら、大人に思えるんだろう」

 セドリックがそれこそ大人びた顔で苦笑した。
 セドリックの魅力はそれだけではないと思うけど。それを主張しようとしたら、女子生徒から挨拶をされ、会話は途切れた。

「……おはようございます」

「おはよう」

「ごきげんよう」

 女子生徒たちは、あからさまにわたしをおとしめることはしなくなった。

 おしとやかに礼をする少女たちの目は、一瞬ギョッとするほど、一律にギラギラとしている。わたしの一挙手一投足に注目しているようなのだ。
 大人っぽい女性がモテる、という学園内の流行りのせいで、わたしは格好の研究対象になってしまったらしい……。

 セドリックがくすっと笑った。

「女子生徒の憧れの的だね。アーリアの崇拝者が増えてしまった」

 それは、ちょっと違うと思うけどね……?





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