【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 わたしはセドリックと一緒に、休憩室へと入っていった。
 セドリックが後ろ手に扉の鍵をかける。そして、窓まで歩を進め、厚手のカーテンを引いた。

「セドリック様?」

 すぐに終わる話だと言っていたのに、なぜ鍵を? それに、カーテン……?

 セドリックは無言のままわたしの前に立った。そして、背後を振り返り、壁の一点を指し示した。

「……鏡?」

 そこには、一枚の大きめの鏡があった。
 ……そのはずだった。

 でも……、あれ?
 おかしい。違う。鏡じゃ、ない。

 これまでずっと鏡だと思っていたのだけれど、カーテンを閉めて暗くなった休憩室で、その鏡はまるで窓のように、隣の理事長室の中の光景を映し出していた。
 確か、理事長室側の壁にも、同じ位置に嵌めこみ式の鏡があったはず……。

 表裏が一体になった、鏡。
 鏡のように擬態した、窓。

 もしかして。
 これって、いわゆる――マジックミラー!?


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