【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
告白
身支度用の大きな鏡だ。
昔からあるものらしく、映りはよくない。ただ、壁に嵌めこまれているので取り外しができず、新しいものに取り替えられずに放置されているような鏡だった。
それが、まさかマジックミラーだったなんて……。
明るい場所では、ただの鏡に見える。けれど、暗いところから明るい場所をのぞくと、普通の窓のようにそちら側が見える。
のぞき鏡――マジックミラー。
今は休憩室が暗く、理事長室が明るいので、こちらからは理事長室の様子がはっきり見えた。逆に理事長室からは、なんの変哲もない鏡に見えているはずだ。
「なぜ、こんなものが……」
今まで暗い状態の休憩室に入ったことがなかったから、気がつかなかった。
「王宮にいろいろしかけがあるように、学園も昔は、単なる教育のための機関というだけではなかったんだと思うよ。密談だったり……密会だったり、ね。アーリア」
意味深に微笑むセドリックが、自然にわたしを長椅子へと導いた。
まずセドリックが深く座り、大きく足を広げる。
「……え?」
「来て、アーリア」
「あの……?」