【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 戸惑うわたしに、セドリックは自分の足の間をポンポンと叩いた。

「ここに座って?」

「でも、お話が」

「そう。学園長が待っているから、あまり時間がない。アーリア、早く」

「あっ」

 セドリックにうながされて近寄ると、腕を引かれ、足の間に座らされる。
 そんなに身長差はないけれど、成長期のセドリックはやっぱり男で。後ろから抱えこまれると、その胸は意外と広く、しっかりと包みこまれる。

 これは……どういうこと?
 二人きりの密室で、目の前にはマジックミラー。そして、マジックミラーの向こうには、エドワードがいる。

「セドリック?」

「少し、話してもいいかな?」

「え、ええ」

 セドリックはわたしの首筋に顔をうずめて話しはじめた。

「アーリアは学園長のこと、どう思っているの?」

「どうって……あの、頼りになる先輩であり、同僚だと思っていますけど」

「ずいぶんアーリアが学園長を信頼しているように見えた。悔しくなるくらい」

「それは……」

 うーん、なんて返事をしたらいいんだろう。エドワードにせまられたことは、さすがに言えないわ。
 わたしが逡巡していると、セドリックが小さくため息を吐いた。

「……困らせてごめんね。本当は、わかってるんだ。これは、僕の劣等感だ」

「セドリック?」

< 106 / 113 >

この作品をシェア

pagetop