【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「セドリック……、今のままで十分なのよ。ありのままのあなたが好きよ。わたくしにとっては、誰よりも頼りになる、素敵な旦那様だわ」
セドリックが髪から手を離してくれたので、やっと振り向くことができた。
わたしは気持ちをこめて、セドリックを見つめた。
「それに……好きな人がどんどん大人になっていく過程を、一番近くで見ていられるなんて、わたくし、とても幸せだと思っているのよ?」
「アーリア……」
後ろからちゅっと口づけられ、わたしも口づけを返した。
「セドリック、だめよ……ここでは」
「……どうして?」
「だって、隣の部屋にエドワード様がいるし、鏡が……」
「エドワード、ね」
不機嫌そうに眉をしかめ、セドリックは口もとだけで笑った。
あ、まずい。こんな状態の時に、ほかの男の名前を出してしまった……。
「大丈夫。あいつは待たせておけばいい。のぞき鏡は、向こうからは見えない」
セドリックの細い指が、ふたたびわたしの髪を乱した。
「セドリック!」
「大きな声を出しちゃだめだよ。こんなに近いんだもの、さすがに聞こえてしまうよ?」
「セドリック、何を言っているの?」
セドリックは無邪気な天使のような、そして同時に美しい悪魔のような、不思議な微笑みを浮かべた。
セドリックが髪から手を離してくれたので、やっと振り向くことができた。
わたしは気持ちをこめて、セドリックを見つめた。
「それに……好きな人がどんどん大人になっていく過程を、一番近くで見ていられるなんて、わたくし、とても幸せだと思っているのよ?」
「アーリア……」
後ろからちゅっと口づけられ、わたしも口づけを返した。
「セドリック、だめよ……ここでは」
「……どうして?」
「だって、隣の部屋にエドワード様がいるし、鏡が……」
「エドワード、ね」
不機嫌そうに眉をしかめ、セドリックは口もとだけで笑った。
あ、まずい。こんな状態の時に、ほかの男の名前を出してしまった……。
「大丈夫。あいつは待たせておけばいい。のぞき鏡は、向こうからは見えない」
セドリックの細い指が、ふたたびわたしの髪を乱した。
「セドリック!」
「大きな声を出しちゃだめだよ。こんなに近いんだもの、さすがに聞こえてしまうよ?」
「セドリック、何を言っているの?」
セドリックは無邪気な天使のような、そして同時に美しい悪魔のような、不思議な微笑みを浮かべた。