【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
高い少年の声が甘くささやく。
「愛しています、アーリア。僕の言葉も覚えていますよね?」
「な……!?」
驚きに硬直したわたしが叫ぶより前に、セドリックの背後から女性の鋭い声が上がった。
「殿下、嫁入り前の娘に何をなさいますの」
お母様だ。
いつも微笑んでいる美しい貴婦人である母が、怖い表情でセドリックの首筋をつかんだ。まるで猫の子みたい。
「伯爵夫人、少しくらいは許してくれませんか」
「いくら殿下が娘に求婚してくださったと言っても、まだ婚約は成っておりません。お慎みください」
セドリックはお母様にどこかに連れていかれ、わたしはようやくひと息吐いた。
今日は一日、部屋に引きこもろう。
前世の記憶はわたしの中だけのことだから置いておくとしても、第二王子に婚約破棄されて、第三王子に求婚されて、おまけに玄関先で倒れたのだ。
今日くらいはゆっくりしても、お父様もお母様も怒るまい。
* * * * *
「愛しています、アーリア。僕の言葉も覚えていますよね?」
「な……!?」
驚きに硬直したわたしが叫ぶより前に、セドリックの背後から女性の鋭い声が上がった。
「殿下、嫁入り前の娘に何をなさいますの」
お母様だ。
いつも微笑んでいる美しい貴婦人である母が、怖い表情でセドリックの首筋をつかんだ。まるで猫の子みたい。
「伯爵夫人、少しくらいは許してくれませんか」
「いくら殿下が娘に求婚してくださったと言っても、まだ婚約は成っておりません。お慎みください」
セドリックはお母様にどこかに連れていかれ、わたしはようやくひと息吐いた。
今日は一日、部屋に引きこもろう。
前世の記憶はわたしの中だけのことだから置いておくとしても、第二王子に婚約破棄されて、第三王子に求婚されて、おまけに玄関先で倒れたのだ。
今日くらいはゆっくりしても、お父様もお母様も怒るまい。
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