【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「もう、セドリックったら。でも、時間が……。あなたも授業があるでしょう?」

「…………」

 学園には余裕を持って来ているけど、セドリックもそろそろまずいんじゃないかしら。

「少しだけよ?」

「…………!」

 セドリックが子供のようにぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。

「うふふ、苦しいわ」

「アーリア、大好き」

 ちらりと鏡を見ると、もうエドワードはいなくなっていた。
 セドリックもわずかに鏡を気にする様子を見せた。

「セドリック……あなたも言ってたでしょう? 今はわたくしだけを見て? わたくしだけを感じて?」

「アーリア……!」

 駆け引きも技巧もなく、ただわたしが欲しいという想いだけをぶつけてくるセドリック。

 そんな夫がたまらなく愛しかった。こんなにわたしを求めてくれる人はいない。

「大好き。ずっと愛している」

「わたくしも愛しています」

「うん。いつも、こんな形でアーリアの愛を確かめて、ごめんね」

 そうか、自覚してたんだ。
 表には出さないけれど、もうわたしにもわかる。セドリックはいつもどこか不安そうで、そのたびにわたしを試そうとして。

 でも、それはいやじゃない。セドリックが安心できるのなら、できるだけ応えたかった。

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