【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「僕は、アーリアにすごく愛されているよね。アーリアと結婚できて、本当に幸せだ……」

「そうよ? どんないきさつがあったって、わたくしが今、あなたを愛していることに変わりはないわ。今だけじゃなくて、未来も、ね」

 すぐに少年は成長し、まばゆいばかりの立派な青年になるだろう。
 あとから思えば、どうして自分は子供なのか、早く大人になりたいなどということを悩む時間は、たぶん一瞬にすぎない。

 その時、彼の横に並ぶのにふさわしい人間になっていなければならないのは、わたしのほうだ。
 ずっと彼に愛してもらえるように。彼を愛しつづけることができるように。

「アーリア……あなたを好きな気持ちだけは、誰にも負けない。断言できる」

 セドリックの青い瞳が輝いていた。
 晴れた日の明るい空の色。そこに浮かぶ、くすぐったいほどの憧憬の色。

 わたしはその美しい空を、飽きずに眺めていた。

「あなたを見るたびに、あなたの声を聞くたびに……僕は何度でも恋に落ちるよ」





 わたしもまた、彼の瞳の中の恋を、きっと一生、見つめつづけるだろう――。







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