【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「ご心配ありがとうございます。少し疲れがたまっていたようですわ」

「うん、あんなことがあったのだもの……。無事、婚約は解消されたみたいですね」

「はい、おかげさまで……」

 何かを確かめるように、わたしをじっと見つめる視線。

「アーリアは本当によかったの? 僕にとっては幸運だったけれど。ヒューバート兄上のこと、好きなのかと思ってました」

「そうですね……。好ましく思っていた時期もありましたけれど、今となってはなんの気持ちもありませんわ」

 それは悔しまぎれじゃなくて本当だ。前世を思い出した時に、すっぱり綺麗になくなってしまった。どうしてあんなにこだわっていたのかわからない。

「そうか。じゃあ、僕のしたことも無駄じゃなかった」

「え? なんのことですか?」

「なんでもない」

 くすっと笑うと、セドリックはわたしの手を取った。

「よかった。これで僕があなたを口説く障害はなくなりましたね」

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