【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「お気遣いありがとうございます、ハロルド殿下。このたびご縁がありまして、セドリック様と婚約を結びました。どうぞよろしくお願い申し上げます」

 内輪の話ってなんだろう。
 疑問に思いながらも、ハロルドに何事もなかったかのように挨拶する。ヒューバートの時も挨拶したので、実はこれで二度目なのだ。

「うん、そんなにかしこまらなくてよいから。ヒューバートとの経緯はわかっている」

「父上も母上も、兄上までもヒューバート兄上のことばかりで妬けてしまいます。あいつの名前なんてアーリアの耳に入れたくないのに」

「まあ、よいではないか。もうアーリア嬢はおまえの婚約者なのだから」

「はい!」

 誇らしげに胸を張るセドリック。

「あとは一刻も早く結婚したいです」

「婚約したのだから、ひと安心ではないのか?」

「そういうことではないのです。アーリアが口づけすら、なかなかさせてくれないのがつらくて」

 えっ、また何を言い出すの、この王子様は!

「セ、セドリック様!?」

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